呪いは存在する
呪いというものは実際に存在する。それを信じる人々の間では。
丑の時参りというのがある。
午前1時から3時の丑の時、木にわら人形を打ち付けて人を呪う行為。
朝、木に打ち付けられたわら人形が見つかる。
人形には名前が書いてある。
見た人は思う。あの人は恨まれているんだ。誰かに酷い事をしたに違いない。
人々は噂し、広まる。
やがて、呪われている本人の耳にも届く。
その人は、呪われていることを知ったことで、恐れ、気に病む。
病気になるか、夜も寝られず睡眠不足による不注意で怪我をするか。
何とも思わなくても、全く偶然で事故にあって死んだりするかもしれない。
原因がどうであれ、何かが起きれば人々は言う。
わら人形にかけた呪いが効いたのだと。
実際には何も起きないことの方が多いだろう。
本人の耳に届かなかったり、届いても全く気にしなかったり。
偶然もそうは起きない。
しかし、何も起きなかったからといって「呪いなんか効かない」とはならない。
効かない理由があらかじめ用意されている。
「丑の時参りは他人に見られたらダメ。効果を発揮しない」と。
呪われた人がぴんぴんしているということは、きっと誰かに見られていたんだろう。
そう解釈され、呪いの有効性が否定されることはない。
呪いというものは実際に存在する。